【動画レビュー】どんな外国語でも半年でマスターしてしまう方法
どんな外国語でも半年でマスターしてしまう方法(How to learn any language in six months | Chris Lonsdale)
※上記動画を見た私の感想と、動画内容のサマリ(私の解釈含む)になります。
話者が中国語を喋れるようになった経験をもとに、外国語習得における5つのポイント(5 principles)と7つの実践(7 actions)を語るというもの。
【感想】
あなたにとっての「生きた英語」とは?
捉えどころない全体としての「英語」ではなく、より具体的な、ある特定のテーマ・シーンにおける、実際にやり取りされる言葉としての「英語」(言うならば「生きた英語」)、これにフォーカスしていくことが重要なのだと思いました。この動画はそういった具体的な環境での言語習得を支持しているように思います。
これまで私は、英語というものを文法、語彙、発音、音読といった、スキルや練習方法によって分割し、そのスキルの集合体みたいなイメージで捉えていたのですが(これは「英語上達完全マップ」という本との出会いによるところが大きいのですが)、これはどこか不自然で頭でっかちな考えなのではと思い至りました。
テーマを絞り込んで、そこに自分との関連性、必要性を見出し、その中で必要なスキルや知識、文法、単語などを習得していくというのが本来の自然な流れなのだと思います。英語上達完全マップそのものは価値ある情報であることは間違いありませんが、こと私に限っては、目的地に着くためのマップが、いつしか、マップそのものを見て自分が何かわかった気になるためのもの、そんなものに成り下がっていたように思います。
【今後取り入れたいポイント】
英語を各スキルに分割する英語上達マップ的な発想はやめる
・広く薄くあいまいな学習から、狭く深く具体的、実践的、リアルな学習への方針転換が必要です。文法や単語も学習してはいきますがあくまでその時々の好奇心によって調べること、必要なぶんだけやること(全部を理解しようと深追いしないこと)を意識していきます。さしあたっては、なるべく人の役に立ちそうなジャンルのありそうな会話について具体的に調べて練習したいと思います。(例えば、外人に道を聞かれたら、とか)
練習にあたっては、動画、音声、身振り手振りなど駆使してリアルを追求。
とにかくリアルを追求し、五感と体で習得するようにしたいです。また、普段から関連動画を垂れ流しして脳を英語で浸しておくことも重要。
【動画内容サマリ】
#1 Focus on language content that is relevant to you.(言語の自分に関わる部分に集中する)
森の中で木についた何かの痕を発見した人が、「これは熊の爪痕で、危険を伝えるメッセージだ」と認識できるのは、そのまま進んでいって熊に遭遇したら命の危険があるから。つまり、自分の命に関わる事柄は人は勝手に覚える。自分に関連する(できるだけ重要な)テーマにフォーカスすることで学習が捗る。
必要性が習得をもたらす。これは日本人と英語の関係を語る上で永遠のテーマですかね。今のところ日本人にはまだ英語の必要性は薄いように私は思いますが、みなさんはどうでしょうか?
ちなみに私の考えとしては、まず英語の必要性については一旦考えるのをやめて、外人と話せるとか、資格が将来に役立つとか、色々理由はつけられますが、ここは単純に「英語は趣味でやってるだけ」と割り切るのが一番良いと思ってます。だって日本で英語勉強するのって、オートマの車しか乗る機会ないのに自分はマニュアル免許も取りたいんです!て言ってるようなもので完全に趣味だと思うし。(しかもマニュアル車にのりたいわけでもないっていうね)
#2 Use your new language as a communicate…from Day 1.(その言語を最初からコミュニケーションの道具として使う)
道具は使うことで覚える。そしてよく使う道具はすぐに覚えるという話。中国語式のキーボードを全然覚えられないでいた人が、ある日48時間以内に中国語でマニュアルを作ることになり、必死にやったらそれがきっかけで覚えられたんだと。
なんやかんや言ってる暇があったら使え、そしたらすぐ覚えるということ。その通りだと思います。英語はコミュニケーションのための道具であるので、コミュニケーションする機会を無理やり作れば自然と使い方を覚えるということにはなるが、これは上でも言った通り日本では難しいね。
色々難しく考えず、ただ道具を使うこと自体に意味を見出すのが良いかもしれないです。英語を使うこと自体が楽しいというのが理想。その楽しさを見出すためにもまずはやってみろ、そういうことかと。
#3 When you first understand the message you will unconsciously acquire the language.(事前に伝達内容がわかっていれば、言語は無意識に覚えられる)
話者が中国で夜行列車に乗っている時、暇そうな中国人が一晩中話しかけてきた。中国語ができないので一方的に向こうが喋っていたのだが、身振り手振りで絵を描いたりもしてくれた。そのあと、数日して周りの中国人が喋っていることがなんとなくわかるようになっていた。電車で無意識に中国語を吸収していたのだ。彼の身振り手振りで何を言おうとしているのかはなんとなくわかったので、意味がわかった状態で言葉を浴びることで、無意識に言葉を覚えたようだ。
(これに関連して、意味をよく理解しないままの文法中心の講義と、意味をよく理解させるより実践的な講義を比較すると、後者の方が成績が良いという研究結果がある)
うーん、話が少々分かりにくいのだが、ざっくりいうと無味乾燥な勉強では人は言語を覚えられないよーということかな。例えば「angry」という言葉を覚えるとして、単語帳を繰り返し見てるよりも、誰か怒ってる人を見て「He's angry.」 と言ってる方が早い、みたいな。なのでなるべくリアリティのある実際のやりとりを想定した方法で勉強することが重要であって、本をベースとしたいわゆる詰め込み勉強は良くないと。独学においても、動画や音声、画像を駆使して臨場感を演出し、自分も喋ったり身振り手振りするような形で学習するとよさそうだ。
#4 Physiological training.(身体的トレーニング)
言語習得は勉強ではない、トレーニングだ。顔面筋肉痛になるくらいでないと駄目だ。
言語習得の鉄則ですね。繰り返しに勝るものはないと。
#5 Psycho-physiological state matters.(精神状態が大切)
楽しく、リラックスして、好奇心を持って取り込むことが大切。
受験勉強などもってのほかですね笑。あと、人間は「自分のため」だけでは頑張りがきかないが、「誰かのため」になると頑張れるそうです。資格取ると会社からお金が出るって話も聞きますが、それで結果が出ないとしたら、自分への金銭的報酬だけでは動機付けが弱いということなので、そういう方は、そのお金で誰かにプレゼントするとかどうでしょう。
以上が5つのポイント(5 principles)です。ここからが7つの実践(7 actions)になります。
#1 Listen a lot.(とにかく多く聴く)
意味がわからなくても良いから、とにかく聴け。脳が浸るまで聴け。リズムやパターンが認識できるようになると良い。
これはその通りですね。私は英語という言語の本質は「スピーチミュージック(音楽のように話す)」と「文章を作ること(誰が何するとかを省略しない)」この2つだと思っています。特に前者において英語特有のリズムパターンを身につけるためには、まさに浴びるように聴くことが重要だと私も思います。(ちなみに、ただ聴くだけでは意味がないという意見もありますが、私は経験上、流し聴きでも効果があるように思います。意味がわからなくてもリズムや強弱などが染み込むと思うので)
#2 Focus on getting the meaning first. (before the word)(まず意味を理解する。単語の前に)
ボディーランゲージなどできちんと意味をキャッチした状態で言葉を聴く。
ここでいう「意味」とは、単純な「言葉の意味」だけではなく、実際の会話の場面、場所、そこでの使われ方やニュアンス、相手の顔の表情、ジェスチャー、といった言葉のもつある種のストーリー全体を理解することまで指しているように思います。こういった非言語的な「イメージ」の世界とうまく結びつけながら刷り込んでいく感じかな。
#3 Start mixing.(知っていることを組み合わせる)
初めは言葉を並べるだけでも良い。とにかく知っている言葉を組み合わせて文章を作る努力をする。言語習得は創造力を使う作業だ。
会話とは、場面ごとに用意された完全な文章を脳内から単に引っ張りだす作業ではなく、必要な単語を選び取り並べていく創造的な作業。その過程で経験値が上がっていくと。
#4 Focus on the core.(コアに集中する)
3,000語あれば英語の日常会話はほぼ可能になる。よく使われる「コア」に集中することで効率的に習得できる。
NGSLの発想ですね。いやー、これ実際やってみると分かるんですけどなかなか難しいんですよね。一見少ない言葉で英語が操れるんだ!と勘違いするのですが、逆にいうと同じ言葉を使っていろんな表現が可能ということですので、学ぶ労力は変わらないと思います。例えば「get」の使い方をマスターするのに一体どれだけの時間がかかるんだ……と序盤で壁にぶち当たります。大事なことは単語の数ではなくて、表現の数だったりするんですよね。なので、表現の数を絞ることは有効かと思います(ありそうなシーンに絞り込んでやるとかね)
#5 Get a language parent.(言語の両親を作る)
赤ちゃんにとっての両親のように、間違っていても意味をわかろうとしてくれる、安心して間違いができる、そして優しく正しくフィードバックをしてくれる、そんな存在を持つことが重要。
これは外人の友達とかスクールとかの話になってしまうので一旦忘れます。オンライン英会話とかがいいんでしょうかね。
#6 Copy the face.(口の動きをコピーする)
口の動きから音がわかる。音から口の動きがわかる。
ネイティブがスピーディに発音ができるのは、そういう発音の仕方をしているからです。音読など続けていると物理的に喋れないとかついていけないとかいう壁にぶつかるんですが、原因を色々調べていくうちに、実はネイティブのは全然違う音になってるとか、くっつくと読まない部分があるだとか、そもそもリズムとってるだけで音はほぼ出てないよとか(機能語など)、彼らには早く喋れる理由があるんですよね。最初はそんなことわからないから、自分の口を動かす神経が圧倒的に劣ってるとかセンスが壊滅的にないんだとか考えちゃいますが、実は真面目に全部綺麗に発音してないってだけなんですよね、アレ。
ちなみにアクセントトレーニングの教材は序盤から取り組むことをオススメします。(他の練習の効率があがるのと、単純に成果が目に見えるので)
#7 Direct connect to mental images.(イメージと直接結びつける)
多くの人が外国語を学ぶ時に、その言葉を一旦母語に置き換えて理解しようとするが、そうではなく、その言葉とイメージを直接結びつけて理解すること。例えば、「Fire」という言葉を理解するとき、頭の中で「炎」という言葉に置き換えるのではなく、炎が燃え上がっているイメージを思い浮かべて「Fire」と結びつける。
これはなんとなく理解していたつもりでいましたが、こうやって人に説明されると説得力が増しますね。これは正しいです。私は単語を覚える時にイメージ検索して必ず画像を見るようにしてますが、発想はこれと似ていると思います。
大人が言語を習得する場合は母語を活用して学習すべきという意見がありますが、一方で、母語を介するからこそ逆に負担になるということもあります(そもそも母語に同じ概念があるのかという問題もある)。この辺りは使い分けが大事ですね。